紋章学アカデミー｜株式会社マーケテック

しるしのルーツとして挙げられるものに、欧州を起源とする「紋章」があります。

「紋章」は騎士が戦争中、何某の誰であるかを識別するために、常に戦場に携行する盾にそれぞれ固有の図形をしるしたことに始まったものです。

今回は、欧州の都市の紋章を題材に、そのしるしに込められた意味を解いていきます。

欧州の都市の紋章はバリエーションに富んでおり、見ているだけでも楽しいものですが、そこに込められた歴史的背景や云われを探ると、一層味わい深さが感じられます。

皆さまもちょっと寄り道気分でヨーロッパ文化に触れてみてはいかがでしょうか。

アントワープ（ベルギー）
ベルギーの都市の紋章の起こりには面白い伝説にまつわるものが多く、このアントワープの紋章もその一つです。
その昔、ドゥロウン・アンティゴヌスという町を荒し回る巨人がいて、勇敢なサルヴィウス・ブラボがその巨人の手を切り落としシュルト川にその手を投げ捨て、町に平和がよみがえったという云われがあり、上の２つの手はその巨人の手を示しています。
また、ここから町の名を Hand-werpen 、つまり「手を投げ捨てる」と名付け、それがなまって Antwerpen になったといわれています。

ル・アーブル（フランス）
このように複数の図柄が組み合わさったものも欧州の紋章には数多く見られますが、そこにはその都市の歴史を垣間見ることができます。
このル・アーブルの場合、フランソワ１世によって１５１７年に港都となったことから、同王のバッジの「火とかげ」が中央に配されています。
また、左上のライオンは、第一次世界大戦のとき、ベルギー王が亡命滞在したことから、その謝意としてベルギー王の紋章を増加されたもので、右上は「フラ・ダ・リ」と呼ばれるゆりの花を表したものでフランス王の紋章として継承されている紋章です。

グルノーブル（フランス）
ゴールドの地にバラが３つしるされたゴージャスかつシンプルなデザインのこの紋章。
かつてのローマ時代の名称の Gratianopolis ＝「優雅な町」の意味から、それをバラの花で表現したものです。

参考文献：森　護著「紋章の切手」　大修館書店
ここに掲載されているエンブレムは“MARKETEQ COLLECTION”蔵のものです。